博物館に連携はなぜ必要なのか ― 制度・財政・社会から読み解く現代ミュージアム経営の核心

目次

はじめに:連携の「必要性」とは何かを問う

現代の社会や経済環境は急速に変化しており、博物館もその影響を強く受けています。近年は、グローバル規模で生じるさまざまな危機や財政難、文化政策の変動、来館者の価値観やニーズの多様化など、従来の常識が通用しなくなる状況が広がっています。多くの博物館が資金や人材の不足に悩まされる一方で、地域社会からはより柔軟で開かれた運営が求められるようになっています(Chaitas et al., 2024)。

このような中、これまでの「単独運営型」の博物館モデルには限界が見え始めています。従来は自館のリソースや専門性のみに依拠する経営が一般的でしたが、今日では外部の知見や多様なネットワークを積極的に活用しなければ、時代の要請に応えることが難しくなっています。協力や協働といった言葉が単なる「便利な手段」ではなく、「生き残るために不可欠な戦略」として認識されつつあるのです(Kampschulte & Hatcher, 2021)。

なぜここまで連携や協働が“必要”とされるのでしょうか。その理由は、効率化やコスト削減といった表層的なメリットだけにとどまりません。公的資金の減少や運営環境の厳格化、さらに社会的課題の多様化といった構造的な背景が重なり、博物館経営における「連携」はもはや選択肢ではなく、生存戦略としての意味を帯びています。協働を通じて他者とつながることが、博物館そのものの価値や公共性の再定義につながるといえます(Stylianou-Lambert et al., 2019)。

連携や協働は、単なる組織運営の工夫ではありません。むしろ「博物館は何のために存在するのか」という根本的な問いとかかわっています。来館者や地域社会の多様なニーズに応え、博物館が「about something」から「for somebody」へと転換していく過程で、連携は不可欠な要素となります。社会の中で博物館が果たす役割を見直し、より広い視点からその存在意義を問い直す必要がある時代を迎えているのです(Kampschulte & Hatcher, 2021)。

本記事では、まず制度的・財政的・社会的という三つの側面から「なぜ連携が必要なのか」を解き明かしていきます。そのうえで、連携の具体的なかたちや意義、そして今後の博物館経営における協働戦略について、多角的に考察します。この記事を通じて、連携の本質的な“必要性”を実感していただければ幸いです。

博物館の連携が必要とされる3つの背景

制度的背景 ― 公共性の再定義

近年、博物館を取り巻く制度環境は大きく変化しています。かつては専門家による収集・保存・展示が主目的とされてきましたが、現代では「博物館は社会にどのような価値を提供できるのか」という公共性の観点がより重視されるようになっています。特に文化政策の転換やガバナンス改革の流れの中で、博物館が地域社会や行政、市民団体、教育機関、NPOなど多様な外部ステークホルダーとどのように関係性を築き、説明責任(アカウンタビリティ)を果たすかが問われています。
この公共性の再定義は、「for somebody」、つまり社会や来館者のために存在する博物館への転換を象徴しています。連携やネットワーク構築を通じて、これまで接点のなかった層へのアクセスや、多様な社会的課題への対応が可能となるため、外部パートナーとの協働は制度的にも不可欠な要素となっています。海外では行政・文化機関・地域コミュニティが連携する事例が増え、こうした動きは日本の博物館界にも広がりを見せています(Kampschulte & Hatcher, 2021)。

財政的背景 ― 自立と持続性の模索

博物館経営において、財政的な持続可能性の確保は最大の課題のひとつです。多くの博物館が国や自治体からの財政支援に依存してきましたが、近年は人口減少や自治体財政の逼迫、公共支出の見直しなどによって助成金や運営費の削減が相次いでいます。これにより、従来型の単独経営モデルは限界を迎え、外部資源の活用が急務となっています。
こうした背景のもと、企業や財団との連携、パブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)、さらにはブランドコラボレーションやクラウドファンディングなど、多様な収益モデルを追求する動きが加速しています。特にPPPは、公共施設の持続可能な運営や新規事業の開発、イノベーション推進において有効な戦略として注目されています。海外では大規模ミュージアムが複数の民間企業・国際財団と連携し、安定した運営資金や新たなサービス開発につなげている事例も多く見られます。
日本でも、こうした先進事例を参考に、自治体や企業との協働による多角的な経営体制の構築が今後ますます重要となっていきます。経営環境が厳しさを増す中で、柔軟かつ戦略的な連携の設計は博物館経営の生命線といえるでしょう(Chaitas et al., 2024)。

社会的背景 ― 多様化・参加・変革の要請

現代社会では、SDGs(持続可能な開発目標)やダイバーシティ、ジェンダー平等、気候変動対策など、社会的課題が複雑化・多層化しています。博物館はこれらの課題に対して、展示や教育普及活動、地域連携プログラムなどを通じて社会的責任を果たすことが期待されています。また、来館者や地域住民の価値観や関心も多様化し、従来の一方向的な情報発信型運営だけでは、十分な満足やエンゲージメントを生み出せなくなっています。
そのため、住民参加型の展示企画や地域資源を活かした共創プロジェクト、学校・福祉・医療など他分野との横断的なネットワークづくりなど、「共創型」「参加型」の運営が主流となりつつあります。特に、博物館が社会変革のプラットフォームとして機能するには、多様な外部パートナーと連携し、多様な視点を受け入れながら新しい価値や学びを共に創り出す協働姿勢が不可欠です。
こうした流れは、単に運営上の工夫やマーケティング戦略にとどまらず、博物館が社会的課題の解決に積極的にコミットし、社会とともに成長する存在であることを示しています(Stylianou-Lambert et al., 2019)。

このように、制度・財政・社会という三つの背景が同時進行することで、博物館における連携は単なる選択肢ではなく、現代経営に不可欠な要件へと変化しています。今後は、より多角的かつ戦略的な連携が博物館の持続可能性と社会的価値の創出を左右するといえます。次節では、こうした連携の概念や具体的なかたちについて、さらに詳しく整理していきます。

連携とは何か ― 必要性を支える概念整理

「連携」「協働」「共創」の違い

博物館経営において「連携」「協働」「共創」といった用語はよく使われますが、それぞれの意味や実践内容には明確な違いがあります。まず、「連携(cooperation)」とは、異なる組織や個人が役割を分担し、情報や資源を相互に補完しながら協力関係を築くことを指します。たとえば、地域の図書館やNPOと連携して展示やイベントを共催するケースなどがこれに該当します。一方、「協働(collaboration)」は、より深い水準で関係者が意思決定や計画、実行までをともに担い、成果物を共同所有する関係性です。例えば学芸員・地域住民・アーティストなど多様な関係者が一つのプロジェクトを共同で立ち上げる場合などが挙げられます。
さらに近年注目されている「共創(co-creation)」は、従来の役割分担や上下関係を超えて、既存の枠組みにとらわれず新たな価値や知識を一緒に生み出す関係性を意味します。たとえば来館者や地域住民とゼロベースで展示を創り上げる参加型ワークショップや、国際的なネットワークを活かしたグローバル共創プロジェクトなどがその好例です。
実際の博物館現場では、これらの用語が曖昧に使われがちですが、連携が「協力」の範囲にとどまるのか、あるいは意思決定・評価・成果のすべてを共有する協働や共創にまで深まるのかによって、運営の質や社会的インパクトには大きな違いが生まれます。特に現代の博物館経営では、「なぜ連携が必要なのか」を論じる際、この違いを構造的に理解し、段階ごとに適切な協働戦略を設計することが求められています(Kampschulte & Hatcher, 2021)。

連携のモード分類と意義

連携の形態やモードは多様化しており、目的や関係性の深さによって分類できます。Stylianou-Lambertらの研究では、博物館における協働を「情報共有型」「資源分担型」「共同企画型」「共創型」という四つの段階に整理しています。
情報共有型は、基本的な情報交換や相互PRのレベルで、費用・リスクも低い一方、直接的な社会的価値やイノベーション効果は限定的です。
資源分担型では、展示資材や人材、専門的ノウハウなどの相互活用・分担が進みます。
共同企画型になると、両者が対等な立場でプログラムや事業を計画・運営し、来館者獲得や学習効果向上に直接貢献します。
共創型は、参加者全員が構想段階から実施・評価までを共に担い、社会的課題の解決や新たな文化価値の創出を目指します。
さらに、ネットワーク型連携(複数館・分野横断的な広域連携)や、プロジェクト型の短期・目的限定型連携、国際連携・デジタル連携など、現代の博物館連携はそのバリエーションが拡大しています。近年では、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)による持続可能な資金調達や、企業とのブランド連携、観光・IT業界との異分野コラボなど、収益性・集客力・社会的インパクトの三面で高い効果が期待されています。たとえば大手ゲーム会社やホテルチェーンと組んだコラボ展示は、若年層・観光客の来館動機を創出し、従来の枠を超えた新たな顧客層の開拓に寄与しています(Chaitas et al., 2024)。
これらのモードごとに、得られるメリットや必要となる信頼関係・ガバナンス・リスク管理の方法も異なります。情報共有型や資源分担型は始めやすい一方、共創型では強固なビジョンの共有や柔軟な組織運営、外部パートナーとの信頼構築が不可欠です。現代の博物館においては、どの連携モードが自館のミッションや課題解決に最も資するかを見極め、段階的に深化させていく柔軟な戦略が求められています(Stylianou-Lambert et al., 2019)。

連携の必要性を支える要素

博物館がなぜ今、これほどまでに連携や協働を求められるのか。その根底には「プロセスの共通所有」と「成果の共有」という現代型連携の核心があります。博物館単独では対応できない社会課題、組織の壁を越えた知識や資源の活用、来館者ニーズや新しい学び・体験の創出には、多様なステークホルダーとの協働が不可欠です。単なる外注や委託とは異なり、計画立案・実行・評価までをパートナーとともに行うことで、社会的インパクトや持続可能性が大きく向上します。
また、分野横断的な連携はイノベーションを生み出す土壌となります。たとえば異業種連携による新サービス開発、教育・福祉・観光など複数分野を巻き込んだ社会包摂型プロジェクト、デジタル技術を活用した国際的ネットワーク形成など、現代の博物館は多層的な協働を通じて新しい社会的価値や文化の可能性を切り拓いています。
このような多様な連携を戦略的に設計し、プロセスと成果をパートナーと真に共有していく姿勢こそが、現代博物館の競争力・公共性・持続可能性を支える基盤となります。今後の博物館経営においては、「なぜ連携が必要なのか」という問いに正面から向き合い、組織の壁や専門性の枠を超えて多様な協働を実現することが、時代の要請であり生存戦略と言えるでしょう。

連携が「必要」であることを示す事例

教育の現場で:子どもが展示をつくるEXPOneer

近年の博物館教育の現場では、従来の学芸員や教員主導による一方向的な学びから、子ども自身が主体となる探究型・参加型の学びへの転換が求められています。代表的な実践例としてEXPOneerプロジェクトが挙げられます。このプロジェクトでは、小学生や中学生が自らテーマを設定し、教員や学芸員、地域団体と協力しながら展示制作の全プロセスに関わります。
具体的には、学校と博物館が長期的なパートナーシップを結び、課題発見・情報収集・展示デザイン・プレゼンテーションまで、子どもたちが自発的に行動できる環境を整備します。大人は「教える側」から「伴走者・支援者」へと役割が変化し、子どもたちの自主性や協調性、クリエイティビティの育成に大きく貢献しています。また、プロジェクトの進行中には地域住民や専門家の協力を得て、多様な視点や価値観に触れることができる点も大きな特徴です。
このような多層的連携は、来館者の新しい動機づけ(リピーター創出や新規層開拓)や、学校と地域社会の結びつき強化にもつながっています。従来の単独運営では実現できなかった教育的・社会的成果が、連携を通じて大きく拡張されていることが明らかになっています(Kampschulte & Hatcher, 2021)。この事例は、「なぜ連携が必要なのか」を教育現場から体現している好例といえるでしょう。

社会と向き合う展示:先住民との共同制作

現代の博物館は、単なる「知の殿堂」ではなく、多様な社会的課題に応答し、共生社会の実現に向けて行動することが求められています。特に、先住民コミュニティやマイノリティグループとの共同展示企画は、社会的包摂や文化的多様性の観点から注目されています。
こうした展示プロジェクトでは、企画立案から設計・実施・評価に至るまで、当事者である先住民や地域グループが対等なパートナーとして積極的に参加します。これにより、これまで専門家主導型の展示では顕在化しなかった生活文化や歴史、ストーリーが生き生きと表現されるようになります。展示の背景には、信頼関係の構築や対話的な意思決定、合意形成プロセスが欠かせません。
また、来館者側にとっても、多様な立場や声が反映された展示体験は新たな学びや共感を生み出します。博物館が社会的課題の解決や社会的信頼の構築に取り組む姿勢は、地域コミュニティの絆や包摂性の向上にも直結しています。社会とともに成長する博物館モデルの実現には、こうした「対等な連携」が不可欠であるといえるでしょう。

経営の現場で:Ubisoftとの協業による社会的インパクト

博物館経営においても、異業種との連携が大きな変革をもたらしています。近年注目されるのが、世界的ゲーム会社Ubisoftとの協業プロジェクトです。博物館はUbisoftの持つデジタル技術やデザイン、ストーリーテリング力を活用し、ゲームと連動した特別展示や体験型プログラムを展開しました。
この連携によって、従来の博物館来館層だけでなく、若年層やゲームファンなど新規層の獲得に成功しています。SNS拡散やオンライン参加を通じて、リアルとデジタルの垣根を越えた幅広いエンゲージメントも実現しています。経営面でも、入場料収入の増加、関連グッズ販売、共同プロモーションによる知名度向上など、多角的な効果が報告されています。
また、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)としてのブランド連携は、財政基盤の強化や新たな資金源の確保にも直結します。伝統的な運営方法だけでは解決できなかった経営課題が、異業種協働によって乗り越えられているのです(Chaitas et al., 2024)。このような革新的連携モデルは、今後の博物館経営において不可欠な戦略となるでしょう。

多様な連携が実現する社会的価値

これらの事例に共通するのは、博物館が「プロセスの共通所有」と「成果の共有」を重視した多層的な連携により、単独では実現し得なかった教育的・社会的・経営的価値を生み出している点です。教育、地域社会、異業種、行政など幅広いステークホルダーとの協働により、新たな来館者体験や学び、社会課題解決モデル、地域コミュニティの活性化、持続可能な運営体制の構築など多面的な成果が広がっています。
特に、参加型・共創型の運営は、SDGsやダイバーシティ推進、観光振興など現代的な社会ニーズにも柔軟に対応できる強みがあります。博物館が単なる「展示機関」から「社会変革のプラットフォーム」へと変貌を遂げるためには、多様な連携と戦略的な協働が不可欠です。これらの実践事例は、「なぜ連携が必要なのか」を具体的かつ実践的に示しており、現代博物館経営の核心的課題に正面から応えています。

連携がないと成り立たない時代へ

外部リソースなしでは成り立たない現代博物館の構造

現代の博物館は、もはや自館だけのリソースや人的ネットワークで全てを賄うことができない時代を迎えています。従来型の運営では、限られた職員数や予算の中で、展示・教育・保存・調査研究といった多様なミッションを同時に果たすことは極めて困難になりました。特に専門職員の人材確保や最新のデジタル技術の導入、情報発信力の強化など、多岐にわたる経営課題は、外部からの協力やリソースを積極的に取り入れなければ乗り越えられません。
加えて、博物館が「地域の公共財」や「社会的インフラ」として再定義される中、行政・NPO・企業・教育機関・専門家など、さまざまな外部主体とのネットワークが経営の根幹を支える要素となっています。資金調達、広報、プログラム開発、運営ノウハウなど、多くの分野で外部パートナーとの連携が不可欠な存在になっています。

多様な来館者ニーズと社会的要請への対応

来館者のニーズや社会的要請は年々多様化・高度化しており、教育・福祉・観光・国際交流・防災など、幅広い分野で博物館に対する期待が高まっています。子どもや高齢者、障害のある方、多文化共生社会に生きる人々、外国人観光客など、多様な利用者が安心して利用できるサービスの提供や、社会的包摂を実現するためのプログラム開発は、単独の組織では対応しきれません。
こうした状況では、「他者の知」や「地域・専門家ネットワーク」が不可欠な資源となります。例えば、教育分野では学校や大学との連携、福祉分野では福祉施設・支援団体との協働、観光分野では自治体や旅行業界とのパートナーシップが不可欠です。多様な来館者ニーズに応え、社会的価値を最大化するためには、外部との戦略的な協働が博物館経営の重要な柱となっています。

専門性と関係性の再統合 ― 専門家の殻を破る

かつては、学芸員や専門スタッフの高度な専門性が博物館運営の中心でしたが、今や「専門性」と「関係性」の両立が求められています。専門家が自らの殻に閉じこもるのではなく、多様なステークホルダーと積極的に関わり合い、知識や経験を社会に開いていく姿勢が重要視されています。
学芸員やスタッフは、単に専門知識を持つ存在ではなく、コーディネーターやファシリテーターとしての役割も担うようになりました。「共創」や「協働」が組織文化や運営戦略の根幹に据えられ、来館者や地域社会とともに新しい価値や学びを創り出す時代に突入しています。専門家と非専門家が垣根を越えて対等に協力し合うことで、従来にはなかったイノベーションや社会的インパクトが生み出されています。

今後の展望と連携の進化

このように、現代の博物館にとって「連携設計」は経営の根本に据えるべき最重要テーマとなっています。財政的な持続可能性、社会的インパクト、地域連携、デジタル活用など、未来志向の経営課題に対応するためには、外部パートナーとの連携をどれだけ多層的かつ戦略的に組み込めるかがカギとなります。
今後は、ネットワーク型連携やPPP、デジタル共創など、従来を超える連携モデルがさらに発展していくことが予想されます。連携はもはや「できたら良いこと」ではなく、博物館が進化し続けるための「原動力」そのものであり、時代を生き抜くための不可避な経営戦略となるでしょう。

まとめ:連携の“必要性”とは、博物館が社会とつながる生命線

本記事では、制度的な変化、財政的な圧力、そして社会的な課題という三つの視点から、なぜ現代の博物館にとって連携が不可欠なのかを多角的に考察してきました。連携は「あれば便利なもの」ではなく、「なければ機能しない」存在であり、博物館が社会とつながり続けるための生命線であることが明らかになりました。

連携や協働は、単なる効率化やコスト削減の手段ではなく、教育的・社会的・経営的な価値を多層的に生み出す原動力です。プロセスを他者と共に所有し、成果を社会全体で共有する姿勢が、現代の博物館に新たな意義や公共性をもたらしています。こうした連携の取り組みを通じて、博物館は時代の要請に柔軟に応じ、社会課題の解決や文化の多様性推進など、より大きな社会的インパクトを創出できるようになっています(Kampschulte & Hatcher, 2021; Chaitas et al., 2024; Stylianou-Lambert et al., 2019)。

今後の博物館経営においては、「連携設計」が戦略の中核をなす領域となります。組織の壁や専門性の殻を越え、多様なステークホルダーとともに新たな価値を創造していく姿勢こそが、持続可能性と社会的信頼の確立に不可欠です。協働と共創の実践が、未来の博物館を支える最重要のカギとなるでしょう。

より具体的な協働戦略やマネジメントの実践については、別記事「博物館の連携とは何か ― 成功する協働戦略とマネジメントの実践」にて詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

参考文献

  • Kampschulte, L., & Hatcher, J. (2021). Expanding museums’ horizons through partnerships and collaboration. In T. Stylianou-Lambert, L. Bounia, & A. Chaitas (Eds.), Museums and Emerging Technologies: Mediating Difficult Heritage (pp. 207–218). Routledge.
  • Chaitas, A., Stylianou-Lambert, T., & Bounia, L. (2024). Public–private partnerships and branding in museums: New business models for sustainability. Museum Management and Curatorship, 39(2), 162–179.
  • Stylianou-Lambert, T., Bounia, L., & Chaitas, A. (2019). Collaboration patterns in museums: Four modes of working together. Museum International, 71(3–4), 124–137.
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この記事を書いた人

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日々の業務経験をもとに、ミュージアムの楽しさや魅力を発信しています。このサイトは、博物館関係者や研究者だけでなく、ミュージアムに興味を持つ一般の方々にも有益な情報源となることを目指しています。

私は、博物館・美術館の魅力をより多くの人に伝えるために「Museum Studies JAPAN」を立ち上げました。博物館は単なる展示施設ではなく、文化や歴史を未来へつなぐ重要な役割を担っています。運営者として、ミュージアムがどのように進化し、より多くの人々に価値を提供できるのかを追求し続けています。

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