ミュージアムでスローアートを実践する

先の記事でミュージアムでマインドフルネス(瞑想)を実践しているケースをご紹介しました。

こちらの記事でもご紹介した通り、ミュージアムという場所は知的好奇心を満たすだけでなく、訪れた人の不安な気持ちを和らげたりするリラックス効果があるということも確認されています。

この記事ではそのミュージアムの新しい体験方法としてスローアートについてご紹介したいと思います。

目次

スローアートとは

そもそもスローアートとはどのような鑑賞方法なのかについて説明します。

スローアートとは厳密な鑑賞方法は決められていませんがゆっくりと一つの作品をじっくり鑑賞することとされています。

実際に人が美術館で鑑賞する時間は研究によると30秒未満というような結果が確認されていたりします。特に大きな展覧会で多くの来場者が会場に集まっている場合、個人的にはもっと短い時間の場合もあるのではと思います。

作品を鑑賞しようと展覧会に訪れたにもかかわらず、人の頭ばかり見えてしまったご経験を持つ方も多いのではないでしょうか。

話は少し脱線しましたがスローアートはゆっくり鑑賞することで普段見えていなかった作品の細部まで鑑賞して新しい発見をしようということが目的になっています。

スローアートデーとは

このような鑑賞方法であるスローアートをより多くの人に知ってもらおうという取り組みがスローアートデーとして毎年4月に行われています。

このイベントに参加したいミュージアムは作品の選定をしてじっくり鑑賞してもらえるような案内をしています。

実際にこのイベントに参加しているミュージアムのプログラムの具体例としては通常、訪問者に 5 つの作品をそれぞれ 10 分間鑑賞するようになっています。

大体1時間をかけて5作品を鑑賞するということになるので体感時間はもっと長く感じる方も多いかもしれません。

しかし、もっとゆっくりと鑑賞する場合もあります。

ハーバード大学の美術史教授であり、スローアートの提唱者であるジェニファー・ロバーツは、生徒たちに 3 時間かけて個々の作品を鑑賞させる場合もあります。

「地球上の芸術の構成や内容について何の予備知識も持たずに、別の惑星から来た訪問者であるかのように、それに取り組んでください」と彼女は生徒達に言いました。

スローアートプログラムを主催する美術館にリソースを提供する「スローアートデイ」の創設者であるフィル・テリーは、ゆっくり見ることに夢中になっています。

彼はピーテル・ブリューゲルの「収穫者たち」を鑑賞するのに10時間以上を費やし、作品の細部(左上隅にある月の青い点)について、頻繁に訪れる都市のあまり知られていないスポットのように語っています。

ここまでゆっくり見ることは普通の人にはちょっと難しいかもしれません。笑

ただ、ゆっくり一つの作品に向き合ってみようと思えることが重要であり、どれだけ長い時間を費やすかはそれぞれの心地の良い時間で大丈夫だと感じます。

このようなスローアートの効果としては実際にゆっくりと鑑賞することで見た気になっていた作品の新しい一面を発見することも考えられます。

また、多くの人はスローアートを実践することで作品に対して偏った見方をしていることに気づく場合があるとも言われています。

「それは、初めて出会うと知り合うようなものです」と、博物館にスローアートプログラムを導入した教育者、アディ・ガヨソは次のように言っています。

「私たちは最初は一定の先入観や思い込みを持っていますが、時間をかけてそれらと時間を過ごすと、その深さに気づきます。」

この言葉から分かるように作品を鑑賞するというのは数十秒見る場合では自分の考えに基づき見たいと思っている場所を見てしまい、その先入観を解きほぐすために10分の時間、作品を向き合うという経験は面白いのかなと思います。

次回ミュージアムに訪れた際には一つのお気に入りの作品を選んでみてゆっくりと10分描けて鑑賞をしてみてはいかがでしょうか。

The ‘slow art’ movement isn’t just about staring endlessly at paintings. It’s also about accessibility.

https://www.washingtonpost.com/entertainment/museums/slow-art-day-looking-at-art/2021/04/01/f6eaf2a0-916b-11eb-bb49-5cb2a95f4cec_story.html?_x_tr_hist=true
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この記事を書いた人

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日々の業務経験と研究知見をもとに、博物館の魅力と可能性を多角的に発信しています。本サイトは、学芸員課程の学生や博物館実務者を主な対象としながら、ミュージアムに関心を持つ一般の方々にも理解しやすい形で、理論と実践を架橋する情報提供を目指しています。

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