多くの博物館において、収蔵品のデジタル化はすでに日常的な業務となっています。資料や作品を撮影し、デジタル画像として保存・公開すること自体は、もはや特別な取り組みではありません。しかし一方で、こうした取り組みが「博物館 デジタル化=オンラインで公開すること」で止まってしまっている例も少なくありません。ウェブサイト上にデジタル画像が掲載されていても、それがどのように利用され、どのような価値を生んでいるのかが十分に検証されていない状況が見られます。
とりわけ、博物館 デジタル画像が「公開後にどのように使われてきたのか」という点については、個別の事例紹介はあっても、体系的に整理された議論は限られてきました。教育現場での活用、研究への応用、創作や再解釈への展開など、博物館 オンライン活用の可能性は多岐にわたりますが、それらがどのような設計思想のもとで成立してきたのかは、必ずしも明確に共有されてきたとは言えません。
そこで本稿では、海外 博物館 事例を手がかりに、博物館のデジタル画像がオンライン上でどのように活用されてきたのかを整理します。焦点を当てるのは、個別の技術やシステムの紹介ではありません。むしろ、各館の実践に共通して見られる考え方や段階的な取り組みを抽出し、日本の博物館でも応用可能な「再現可能な型」として提示することを目的とします。
デジタル画像は、単に公開されることで価値を持つのではなく、どのような条件で、どのような形で利用されるかによって、その公共的意義が大きく変わります。本稿は、博物館におけるデジタル化を「作業」や「技術導入」としてではなく、利用と関係性の設計として捉え直す試みでもあります。海外の実践を通じて、博物館のデジタル画像が持つ可能性をあらためて考えていきます。
博物館のデジタル画像活用をどう整理すべきか
「公開するか否か」という二分法の限界
これまで博物館におけるデジタル化は、「収蔵品をデジタル化し、オンラインで公開しているかどうか」という観点で語られることが少なくありませんでした。実際、多くの博物館でデジタルアーカイブの整備は進み、ウェブサイト上でデジタル画像を閲覧できる環境は広がっています。しかし、その一方で、画像が公開された後に十分な活用が生まれていない事例も数多く見られます。
この状況は、デジタル化の進捗そのものよりも、「公開したかどうか」という二分法で評価してきたことに一因があります。重要なのは、公開の有無ではなく、公開された後に何が可能になるのかという点です。教育での利用、研究への応用、創作や再解釈への展開など、デジタル画像が果たしうる役割は多様ですが、それらは自動的に生まれるものではありません。
実際には、画像の解像度や点数といった量的・技術的な要素以上に、どのような利用を想定し、どのような条件や導線を設計しているかが結果を大きく左右します。デジタル画像活用の成否は、技術水準の差ではなく、設計思想の違いとして捉える必要があります。
海外事例に共通する段階的アプローチ
海外の博物館における成功事例を検討すると、オンライン活用が偶然に成立しているわけではないことが分かります。各館の規模や分野、所蔵品の性質は異なりますが、デジタル画像の活用が進んでいる事例には、共通した段階的アプローチが見られます。
本稿では、そのプロセスを四つの型として整理します。第一に、画像を「使ってよい状態」にするための利用条件の整理です。第二に、鑑賞にとどまらず、制作や学習につながる利用の設計が行われます。第三に、データやAPIを通じて、博物館の外部にいる主体が価値を拡張できる仕組みが整えられます。そして第四に、標準化を通じて、研究や教育環境の中で持続的に利用される基盤が形成されます。
これらは選択肢ではなく、デジタル画像活用が成熟していく過程として理解することができます。以下では、この四つの型を具体的な海外事例とともに検討し、博物館のオンライン活用をどのように設計すべきかを考えていきます。
ライセンスを明確化し「使ってよい状態」をつくる
オンライン活用を阻む最大の要因としての権利の不明確さ
博物館のデジタル画像がオンライン上で十分に活用されない理由として、しばしば技術的制約や人手不足が挙げられます。しかし、実際の利用現場を見ていくと、より根本的な要因として「権利の不明確さ」が存在していることが分かります。多くの利用者は、画像が「使えない」から利用を諦めているのではなく、「使ってよいのかどうか分からない」ために手を出せずにいるのです。
とりわけ教育や研究の現場では、利用条件が曖昧な資料は避けられる傾向があります。授業資料や研究発表、出版物などでは、後から権利上の問題が生じるリスクを極力回避する必要があるため、利用条件が明確でない画像は、たとえ高品質であっても選択肢から外されてしまいます。その結果、博物館が時間と費用をかけてデジタル化した画像が、ほとんど使われないままになってしまう状況が生まれます。
この意味で、ライセンスの整理は単なる技術的作業ではありません。どの資料を、どの条件で公開するのかを定め、社会に対して説明可能な形で示すことは、博物館のガバナンスそのものに関わる課題です。オンライン活用を進めるためには、まず画像を「使ってよい状態」に置くことが不可欠となります。
The Metropolitan Museum of Artにみるオープンアクセスの設計
こうした課題に対して、The Metropolitan Museum of Artは早い段階から体系的な対応を行ってきました。同館では、著作権が消滅したパブリックドメイン作品を中心に、Open Accessとして整理し、オンラインで公開しています。その際に重要なのは、単に画像を掲載するだけでなく、利用条件を明確に示している点です。
具体的には、対象となる画像についてCC0を明示し、教育、研究、創作を含むあらゆる用途での自由な利用を可能にしています。これにより、利用者は個別に問い合わせを行うことなく、安心して画像を再利用することができます。また、各作品ページには権利情報が分かりやすく表示されており、利用に関する考え方はFAQとしてまとめられています。
このような設計は、博物館側が利用者を信頼し、画像を公共資源として位置づけていることを明確に示しています。その結果、デジタル画像は教育資料や研究成果、創作活動の素材として、博物館の外部で広く流通するようになりました。
Art Institute of Chicagoにみるライセンス明示の実務効果
Art Institute of Chicagoもまた、ライセンスの明確化によってオンライン活用を大きく進展させた事例の一つです。同館では、多数の高解像デジタル画像をCC0で公開し、「制限なく再利用できる」ことをウェブサイト上で明確に打ち出しています。
この分かりやすいメッセージは、利用者にとって非常に重要です。専門的な法的説明を読まなくても、「自由に使ってよい」ということが直感的に理解できるため、教育現場や出版、デザイン分野など、幅広い領域で画像の再利用が進みました。結果として、博物館の画像は展示室の外で新たな文脈を獲得し、社会的な可視性を高めることになりました。
ここで注目すべき点は、特別な技術を導入したわけではなく、利用条件を明確に示しただけで活用の幅が大きく広がったという点です。ライセンスの明示そのものが、オンライン活用を促進する強力な手段となっています。
日本の博物館が最初に整理すべき論点
日本の博物館においてライセンス整理を進める際には、いくつかの現実的な課題があります。寄託資料の存在、撮影権の扱い、第三者が権利を持つ資料の混在など、一律の方針を立てることが難しい場合も少なくありません。
しかし、こうした状況だからこそ、すべてを一度に解決しようとするのではなく、「公開可能な群」から段階的に整理を進めることが重要です。たとえば、権利関係が明確な資料や、自館が権利を保有している画像から公開を始めるだけでも、オンライン活用の基盤は形成されます。
また、作品単位で利用条件を示すことは、実務上きわめて有効です。すべての資料に同一の条件を適用できなくても、個々の画像について「どこまで使ってよいか」を明示することで、利用者は判断しやすくなります。ライセンスを明確化し「使ってよい状態」をつくることは、博物館のデジタル画像活用における最初の、そして最も重要な一歩だと言えるでしょう。
制作・学習に繋がる導線を設計する
鑑賞用画像から「学習素材」への転換
博物館のデジタル画像は、これまで主に「鑑賞用」として位置づけられてきました。展示室で作品を見る体験をオンライン上で補完するものとして、高精細な画像を閲覧できること自体が目的とされてきた側面があります。しかし、オンライン活用を本格的に進めるためには、画像を「見るもの」から「使うもの」へと再定義する必要があります。
教育や学習の文脈では、単に画像が並んでいるだけでは十分とは言えません。授業で取り上げる、レポートで引用する、比較しながら考察するといった行為を可能にするためには、利用者がどのように画像を扱えるのかが明確であることが重要です。そのためには、画像そのものの質以上に、どのような使い道が想定されているのかを示す「編集された入口」が求められます。
利用の具体像が示されないまま公開されたデジタル画像は、多くの場合、閲覧にとどまります。公開されたという事実だけでは、教育や学習への展開は自動的には生まれません。画像を学習素材として機能させるためには、どのような文脈で、どのように使えるのかを可視化する設計が不可欠です。
Rijksmuseumにみる利用を前提とした公開設計
こうした課題に対する先進的な実践として、Rijksmuseumの取り組みが挙げられます。同館では、高精細なデジタル画像をオンラインで閲覧できるだけでなく、ダウンロードして自由に利用できる環境を整えています。画像は鑑賞の対象であると同時に、利用の素材として位置づけられています。
特徴的なのは、利用を前提とした機能が体系的に組み込まれている点です。利用者は気になった作品を保存し、自分だけのコレクションを作成することができます。また、画像の一部を切り抜いたり、他者と共有したりすることも容易です。こうした機能は、学習ノートを作る、授業資料を準備する、作品同士を比較するといった行為を自然に支えています。
さらに、Rijksstudioと呼ばれる仕組みでは、「この画像で何ができるのか」を体験として示しています。完成された教材を一方的に提示するのではなく、利用者自身が編集し、組み合わせ、再構成することを前提とした設計です。この点において、デジタル画像は鑑賞の対象を超え、学習や制作のための素材として機能しています。
利用のされ方を想定することの実務的意味
制作や学習に繋がる導線を設計する際、しばしばUIの洗練や検索機能の高度化に注目が集まります。しかし、実務の観点から見ると、それ以上に重要なのは「どのような使い道が想定されているか」を編集して示すことです。利用者は必ずしも博物館の意図を読み取ってくれるわけではありません。
たとえば、教育普及活動と連動したテーマ別整理や、簡易なワークシートとの接続があるだけで、デジタル画像の利用可能性は大きく広がります。すべての画像に詳細な解説を付ける必要はなく、利用の入口となる最小限の手がかりを用意することが重要です。
このような設計は、博物館側がすべてを説明し、使い方を指示することを意味しません。むしろ、利用者が自ら解釈し、再構成できる余地を残すことが、学習や制作を促進します。制作・学習に繋がる導線を意識的に設計することは、デジタル画像を単なる公開資料から、能動的に使われる学習資源へと転換するための重要な要素だと言えるでしょう。
API・データ配布によって外部が価値を拡張する
博物館が「すべてを担わない」という発想
博物館のデジタル画像活用というと、しばしば「どのようなオンライン展示を作るか」「どのようなコンテンツを自館で提供するか」といった発想に引き寄せられがちです。しかし、海外の成功事例を見ていくと、オンライン活用が進んでいる博物館ほど、活用の主体を館内に限定していないことが分かります。
ここで重要なのは、データを公開することが責任の放棄ではないという点です。むしろ、博物館が収集・保存してきた知識や資料を、社会が再利用できる形で開くことは、公共機関としての役割を拡張する行為と捉えることができます。博物館がすべての活用方法を想定し、実装する必要はありません。外部の教育者、研究者、開発者、市民が、それぞれの文脈で価値を付加できる余地を残すことが、オンライン活用を持続的なものにします。
APIやデータ配布は、そのための手段の一つです。画像やメタデータを一定の形式で提供することで、博物館の外部にいる主体が、自らの目的に応じて再構成し、新たな利用を生み出すことが可能になります。この発想の転換が、デジタル画像活用を次の段階へと進める基盤となります。
The Metropolitan Museum of ArtにみるコレクションAPIの活用
The Metropolitan Museum of Artでは、オンラインでの閲覧体験を充実させる一方で、コレクションデータをAPIとして提供しています。これにより、作品情報や画像データを、外部のシステムやアプリケーションから直接参照することが可能になりました。
このAPIは、博物館の公式サイトを補完するだけでなく、外部での多様な活用を生み出しています。研究者によるデータ分析、教育現場での教材作成、開発者による学習支援ツールや可視化アプリケーションなど、博物館が想定していなかった利用が次々と派生しています。ここでは、博物館がすべてを設計するのではなく、利用の基盤だけを整えている点が特徴的です。
また、同館の取り組みでは、人間向けの閲覧体験と、機械向けのデータ提供が併走しています。一般利用者はウェブサイト上で作品を鑑賞し、専門的な利用者はAPIを通じてデータを取得する。この二つの入口を分けて設計することで、異なる利用層のニーズに同時に応えています。
Smithsonian Institutionにみる大規模データ公開の社会的波及
Smithsonian InstitutionのOpen Accessは、APIやデータ配布による外部拡張を、より大規模に実践している事例です。同機関では、2Dの画像データだけでなく、3Dデータを含む膨大なデジタル資源を公開し、教育・研究・創作での再利用を可能にしています。
この取り組みによって、博物館のデータは単なる展示資料ではなく、学習素材、研究データ、創作のための素材として社会の中に流通するようになりました。学校教育では教材として、研究分野では分析対象として、創作の現場では表現の素材として、同じデータが異なる文脈で活用されています。
ここで注目すべきなのは、博物館の役割が「展示を提供する場」から「素材を提供する基盤」へと拡張している点です。APIやデータ配布を通じて、博物館は価値創出のすべてを担うのではなく、価値が生まれる土壌を整える存在となっています。外部が価値を拡張できる状態をつくることこそが、デジタル画像活用を持続的なものにする鍵だと言えるでしょう。
IIIFによって研究・教育環境に「載る」画像公開
IIIFとは何か:標準化がもたらす意味
デジタル画像のオンライン活用が進む中で、近年とくに注目されているのがIIIF(International Image Interoperability Framework)です。IIIFは、高精細な画像を軽量に配信し、拡大・縮小・切り出しを柔軟に行うための国際標準として整備されてきました。単に画像を高画質で見せるための技術ではなく、学術利用や教育利用を前提とした設計思想を持っている点が特徴です。
IIIFの重要な点は、比較・注釈・共有といった行為を前提にしていることにあります。複数の機関が所蔵する画像を同一のビューア上で並べて比較したり、画像の特定部分に注釈を付けて議論したりすることが可能になります。こうした機能は、従来の「自館サイト内で完結する画像公開」では実現が難しかったものです。
このように、IIIFは画像を自館のウェブサイトに閉じ込めるのではなく、研究や教育の環境そのものに「載せる」ための標準だと言えます。画像は博物館の管理下にありながらも、外部のツールやプラットフォームと接続され、異なる文脈で再利用されることを前提としています。
British Museumにみる大規模公開と探索性
IIIF的な発想と親和性の高い取り組みとして、British Museumのオンラインコレクション刷新が挙げられます。同館では、大規模なコレクションデータベースを再構築し、高精細画像を含む多くの資料をオンラインで探索できる環境を整備してきました。
この刷新によって、利用者は単一作品を鑑賞するだけでなく、関連資料を横断的にたどりながら調査することが可能になりました。高精細画像によって細部を確認できるだけでなく、検索やフィルタリングを通じて、テーマや時代、地域を越えた探索が行える点が特徴です。
こうした環境は、比較研究やデジタル人文学の分野と高い親和性を持っています。作品や資料を並べて比較する、異なる所蔵品を横断的に分析するといった研究手法にとって、標準化された画像配信と高い探索性は欠かせない要素となっています。
IIIFは誰にとって必要な技術なのか
もっとも、IIIFはすべての博物館にとって必須の技術というわけではありません。展示や広報を主目的とするオンライン活用であれば、必ずしもIIIFを導入しなくても十分な成果を得られる場合もあります。そのため、IIIFは「導入すべきか否か」を一律に判断するものではなく、利用目的に応じて検討されるべき技術です。
一方で、研究利用や比較利用が明確に想定される分野、たとえば歴史資料、美術作品、文書資料、版本や写本などを扱う場合には、IIIFは非常に有効な基盤となります。外部の研究者や教育機関が、自らの環境で画像を扱えるようになることで、博物館の資料はより広い知の循環の中に組み込まれていきます。
実務的には、すべてのコレクションを一度にIIIF対応させる必要はありません。研究利用の多い資料群や、比較のニーズが高いコレクションから段階的に導入することで、負担を抑えつつ効果を実感することが可能です。IIIFは、デジタル画像活用の到達点の一つとして、目的に応じて選択されるべき技術だと言えるでしょう。
4つの型はどのように組み合わされてきたか
海外事例に共通する導入順序
ここまで見てきた海外の博物館事例を整理すると、デジタル画像のオンライン活用は、無秩序に拡張されてきたわけではないことが分かります。多くの事例に共通しているのは、一定の導入順序を踏みながら、段階的に成熟してきたという点です。
その順序は概ね、「ライセンスの明確化」「利用導線の設計」「データ公開による外部拡張」「標準化による持続的利用」という流れとして整理できます。まず、画像を「使ってよい状態」に置くことで、利用の前提条件が整えられます。次に、制作や学習につながる導線を設計することで、閲覧にとどまらない利用が生まれます。そのうえで、APIやデータ配布によって外部の主体が関与できる余地が広がり、最後にIIIFのような標準化によって、研究・教育環境の中で長期的に利用される基盤が形成されていきます。
重要なのは、これらが同時に導入されているわけではないという点です。海外の成功事例においても、最初からすべての仕組みが整っていたわけではなく、利用状況や組織体制、社会的要請に応じて、段階的に発展してきました。このプロセスを理解することは、日本の博物館が無理のない形でオンライン活用を進めるうえで重要な視点となります。
規模や分野によって異なる適用パターン
また、4つの型は、すべての博物館が同じ形で到達すべき目標ではありません。博物館の規模や分野、所蔵資料の性質によって、適用されるパターンは大きく異なります。
たとえば美術館では、高精細画像の公開とライセンス明確化によって、教育や創作への再利用が比較的進みやすい傾向があります。一方、歴史博物館や文書資料を多く扱う館では、比較研究や注釈を重視した利用が想定されるため、IIIFのような標準化の意義がより大きくなります。大学博物館の場合は、研究・教育との結びつきが強いため、データ公開やAPIによる外部連携が効果を発揮しやすい場面も多いでしょう。
このように、4つの型はチェックリストのようにすべてを達成することを求めるものではありません。自館の目的や役割に応じて、どの段階を重視し、どこまでを目指すのかを判断することが重要です。すべてを一度に実現しなくても、段階的に取り組むことで、デジタル画像のオンライン活用は着実に前進していきます。
まとめ:デジタル画像は「使われてこそ」公共資源となる
本稿で見てきたように、博物館におけるデジタル画像活用の成否は、特定の技術やシステムを導入したかどうかによって決まるものではありません。重要なのは、デジタル画像をどのような前提で公開し、どのような利用を想定し、どのような関係性を社会と築こうとしているのかという設計の問題です。デジタル画像活用は、技術論ではなく設計論として捉える必要があります。
海外の博物館事例を振り返ると、共通して見えてくるのは、画像を単に「守る対象」や「展示の代替物」として扱っていない点です。高精細なデジタル画像は、鑑賞の補助にとどまらず、教育、研究、創作といった多様な文脈で再利用される公共資源として再定義されてきました。そのために、利用条件の明確化、利用を前提とした導線設計、外部による拡張、標準化による持続的利用といった段階的な取り組みが積み重ねられています。
本稿で整理した4つの型は、特定の国や大規模館だけに当てはまる特別なモデルではありません。すべてを一度に実現する必要はなく、自館の目的や体制に応じて、段階的に応用することが可能です。まずはライセンスを整理し、次に利用のされ方を意識し、必要に応じて外部との連携や標準化を検討するというプロセスは、日本の博物館にとっても現実的な選択肢と言えるでしょう。
デジタル画像は、保存されているだけでは価値を十分に発揮しません。使われ、再解釈され、新たな知や学びを生み出すことで、はじめて公共資源としての意義を持ちます。博物館経営、教育、研究を横断する基盤として、デジタル画像をどのように位置づけるのか。本稿で整理した視点は、その検討を進めるための一つの手がかりとなるはずです。
参考文献
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