ミュージアムと企業のパートナーシップ

ミュージアムは来館者から得られる入館料だけでは全てを運営する資金を獲得することはできません。

そこで、多くのミュージアムでは公的資金を投入したり寄付金を得たりするなどあらゆる収入源を模索しています。

その収入源のうち大事なものの一つに企業からの寄付金やパートナーシップがあります。

この企業とミュージアムのパートナーシップは寄付金だけでなく、ミュージアムの特定の事業を資金や技術面でサポートすることも含まれています。

今回の記事ではそのミュージアムと企業のパートナーシップの例について紹介したいと思います。

目次

ユニクロとMoMAのパートナーシップ

一つ目の例は、ユニクロとニューヨークにあるMoMAのパートナーシップの例です。

先の記事にてMoMAはミュージアムショップに力を入れていて日本にも直営店がいくつも営業していることはご紹介しました。

実際にニューヨークにあるMoMAの中にあるショップではMoMAが所蔵している作品がプリントされたTシャツが販売されていたりします。このようなコラボグッズはどこのミュージアムでも多くの行われていたりします。

しかし、MoMAとユニクロのパートナーシップの特殊なところは、毎月第一金曜日にニューヨーク在住の方に向けた夜間無料開館を実施するための資金をユニクロが提供していることです。

UNIQLO NYC Nights

https://www.moma.org/calendar/programs/159

このUNIQLO NYC Nightsでは事前予約により午後 4 時から午後 8 時までの間の無料でMoMAの展示室で鑑賞することができます。

また、展示室で鑑賞を楽しむだけでなく、ポップアップバーでは、ビールやカクテルなどとともに、The Lot RadioのDJによる音楽を楽しむことができます。

さらに展示室ではドロップインドローイングと呼ばれる即興の写生体験をすることもできます。

もちろんMoMAのミュージアムショップとカフェもオープンしますので、カフェで軽食を食べたり、ザモダンと呼ばれるレストランでお食事を楽しむことができます。

このように無料で鑑賞ができるだけでなくあらゆるミュージアムのイベントやカフェの利用もできて金曜日の夜が楽しくなるのは間違いありません。

では、このような無料イベントをすることによりユニクロはどのようなことを得ることができるのでしょうか。

パートナーシップでユニクロが得られること

ユニクロはこのようなイベントに協力する理由をデザインに対するユニクロの取り組みと、世界中の人々がアートをより身近なものにするという取り組みと位置付けています。

このようなユニクロのデザインやアートに対する考えが第一にあることは間違いありませんが、私にはもう一つ重要なパートナーシップの理由があるように考えています。

それは、MoMAが所蔵している貴重なアート作品をTシャツのデザインとして借りることができることです。

MoMAには近代を代表するポップアートの作品やゴッホの代表作など世界的に知られた名画がたくさんあります。

その有名なアート作品をTシャツのデザインに用いることにより多くの人にとって魅力的なTシャツを作ることができるようになります。

このようなTシャツを作ることでユニクロは新しいデザインを施したTシャツを作ることができるし、MoMAにしても自分たちの作品の新しい価値を見つけることにつながっていたりします。

実はユニクロはMoMAだけでなく、ルーブル美術館とも同じようなパートナーシップを結んでいます。

ルーブル美術館ではユニクロは2021年5月からスタートした教育プログラム「ミニ・ディスカバリー・ツアー」を支援しています。

主に家族連れを対象としたこのガイドツアーでは、20分間で美術館の象徴的な展示を巡ることができます。美術館チケットのみで参加できます。こちらのプログラムは学校休暇期間中に、休館日(火)を除き毎日開催されています。

そして、ルーブル美術館ともTシャツにおけるコラボレーションを行い、ユニクロのTシャツのデザインの可能性を広げています。

まとめ

このようにミュージアムと企業のパートナーシップはミュージアムだけでなく、企業にとってもメリットがある取り組みにすることが重要になると思います。

企業のメリットが何なのかをしっかりと把握してWin-Winの関係性で初めて成立するものだと思います。

日本においてもこのような取り組みが成功事例としてどんどん増えてくることを期待しています。

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この記事を書いた人

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日々の業務経験と研究知見をもとに、博物館の魅力と可能性を多角的に発信しています。本サイトは、学芸員課程の学生や博物館実務者を主な対象としながら、ミュージアムに関心を持つ一般の方々にも理解しやすい形で、理論と実践を架橋する情報提供を目指しています。

博物館に関わる実務経験を背景に、博物館経営、ガバナンス、文化政策に関する知見を蓄積しています。現場での経験を踏まえつつ、制度・理論・実践を往還しながら、博物館をめぐる諸課題を整理することを重視しています。

「Museum Studies JAPAN」は、博物館を単なる展示施設としてではなく、社会的価値を創出する文化インフラとして捉え、その経営・ガバナンスを体系的に整理することを目的として立ち上げました。博物館がどのように公共性と持続可能性を両立し、社会に対して価値を提供し続けることができるのか。その理論的基盤と実務的アプローチを継続的に探究しています。

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