博物館とウェルビーイングの関係とは ― 心の健康・社会的包摂・癒しの空間をつくる戦略とは

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博物館とウェルビーイング ― なぜ今注目されるのか

近年、「ウェルビーイング(wellbeing)」という概念が、医療・福祉・教育・文化といった多様な領域で注目されるようになっています。単に病気がない状態を超えて、身体的・精神的・社会的に良好な状態を指すこの言葉は、個人の幸福感を支える環境や仕組みづくりと深く関わっています。こうした流れのなかで、博物館もまた、単なる展示や保存の場を超えて、来館者の心の健康や社会的つながりを促進する「ウェルビーイングの場」として再評価されつつあります。

とりわけコロナ禍以降、人々の孤立や不安、地域社会との断絶といった問題が顕在化し、文化施設には新たな社会的役割が期待されています。博物館は、非日常的な空間でありながらも誰でも訪れることのできる開かれた場として、静けさや美的体験を通じた癒しの効果を持ちます。また、参加型展示や対話型プログラムを通じて、自己表現や共感的交流を可能にする「心理的安全性の高い空間」としても機能しています。

実際、イギリスのArts Council Englandをはじめとする欧米の文化政策では、博物館をウェルビーイング推進の拠点と位置づけ、医療機関や福祉組織との連携プログラムが制度化されています(Arts Council England, 2020; Chatterjee & Camic, 2015; Thomson et al., 2017)。日本でも、自治体主導で「文化資源を活かした地域福祉」や「ミュージアムによる社会的包摂」を掲げる事例が増えており、博物館の可能性が新たに問い直されています。

博物館が健康や福祉の分野といかに連携し得るのかについては、以下の記事でも詳しく紹介しています。

本記事では、こうした国際的・実践的な動向をふまえつつ、「博物館とウェルビーイング」というテーマを心理的・空間的・社会的観点から多角的に読み解き、実践事例や評価手法とともに、これからの博物館に求められる役割について考察していきます。

心理的ウェルビーイングとは何か ― 主観的幸福と意味のある経験

近年、「ウェルビーイング」という言葉は医療、教育、福祉、文化などさまざまな分野で注目されており、なかでも「心理的ウェルビーイング(psychological wellbeing)」は個人の幸福や社会の豊かさを考えるうえで重要な概念とされています。心理的ウェルビーイングとは、ストレスが少ない・不安がないという消極的な状態だけでなく、自分らしさや自己の成長を実感できること、人生の意味や目的を見出せることも含めて捉えられています。博物館や美術館などの文化施設は、こうした心の健康や豊かさを支える場として、国際的にもその意義が見直されています(Chatterjee & Camic, 2015)。

この心理的ウェルビーイングを評価する際に注目されるのが、「主観的幸福(subjective wellbeing)」という考え方です。これは、自分の生活や日常体験にどれだけ満足しているか、日々のなかでどれほどポジティブな感情を感じているかという点に着目したものです。主観的幸福には「hedonic wellbeing(快楽的幸福)」と「eudaimonic wellbeing(自己実現的幸福)」という2つの側面があり、前者は喜びや楽しさなど感情的な充足感、後者は生きる意味や目的、自己の成長に重きを置く点が特徴です(Chatterjee & Camic, 2015)。

実際に博物館での体験は、こうした幸福感や満足感にさまざまな形で寄与しています。展示やプログラムを通じて知的な好奇心が刺激されることはもちろん、非日常的な空間で心が解放される体験は、気分転換や自己肯定感の向上につながります。また、参加型展示や対話プログラムの広がりにより、来館者が自ら主体的に関わることで、他者とのつながりや社会的なアイデンティティの強化にも寄与しています。これらは、孤立感や不安感が高まりやすい現代社会において、心理的な安定や幸福の基盤となる重要な要素です(Thomson et al., 2017)。

さらに、こうした体験による効果を測定するため、PANASやMuseum Well-being Measure(MwM-OA)など、博物館活動に即した評価指標も用いられています。来館者の感情や自己変容がどのように生まれたのかを「見える化」することで、博物館の社会的役割や価値の把握にも役立っています(Thomson & Chatterjee, 2015; Thomson et al., 2017)。

博物館は癒しの空間となるか ― レストラティブ環境としての展示設計

レストラティブ環境とは何か ― 博物館における癒しの理論的背景

博物館は、展示や学びだけでなく、来館者が日常生活のストレスや慌ただしさから解放され、心をリフレッシュできる空間としての役割も担っています。このような「癒し」や「心理的回復」がもたらされる空間は、環境心理学では「レストラティブ環境(restorative environment)」と呼ばれています。特に注意回復理論(Attention Restoration Theory)では、人間は日々の生活で多くの情報や刺激を受けることで精神的な疲労を蓄積し、その回復のためには自然環境や静かな空間、あるいは非日常的な場所が有効だとされています(Chatterjee & Camic, 2015)。博物館はまさにこうした要素を満たす空間であり、多くの人が「心が落ち着く場所」として利用しています。

空間デザインと環境要素 ― 癒しを生む展示空間の工夫

癒しや安心感を生み出す博物館空間の実現には、さまざまな空間デザインの工夫が求められます。例えば、展示動線の設計によって、来館者が自分のペースでストレスなく巡回できるよう配慮されていることが重要です。また、照明の明るさや色温度、音響の静けさや心地よいBGM、壁や床の色彩、空調による快適な温度設定など、五感に訴える環境要素も大きく影響します。展示室に適度な余白やベンチを配置することで、作品とじっくり向き合うための静寂や「自分だけの時間」を生み出しやすくなります。こうした細かな配慮によって、来館者は安心して展示体験に没入でき、結果としてストレスが和らぎ、心のバランスが回復しやすくなります(Chatterjee & Camic, 2015)。

来館者の主観的体験と心理的変化

多くの来館者が、博物館を訪れることで「現実から離れ、気持ちがリセットされた」「静かな空間で心が落ち着いた」など、主観的な癒しやリフレッシュ効果を感じていることが報告されています。とくに、館内の空間や展示物に「being away(現実からの離脱)」や「fascination(心を惹きつける体験)」を感じると、ストレス軽減や情動の安定といった心理的なポジティブ効果が現れやすいと考えられています(Chatterjee & Camic, 2015)。また、静かな時間や美的な刺激を通じて、自己の内面と向き合い、心身の調和を取り戻すプロセスが自然と促されます。

誰もが安心できるユニバーサルデザインの重要性

博物館が本当の意味で癒しの空間となるためには、多様な来館者が快適に過ごせるユニバーサルデザインの考え方も不可欠です。たとえば、高齢者や子ども、障害のある方にも配慮したバリアフリーの動線や、誰にとっても分かりやすいサイン表示、十分な休憩スペースなどの設計が求められます。文化的背景や感覚の個人差にも配慮し、多様性を尊重した空間づくりを進めることで、より多くの人が「自分の居場所」としての安心感を得られるようになります(Chatterjee & Camic, 2015)。

癒しの空間を「見える化」する評価と今後の展望

このようなレストラティブ効果を実際に把握するため、主観評価アンケートや来館者の感想分析、滞在時間や動線の観察など、さまざまな評価手法が用いられています。しかし、空間の快適さや安心感といった心理的な要素は、数値化が難しい面も多く、今後も現場での実践と評価方法の工夫が求められます(Chatterjee & Camic, 2015)。癒しの空間としての博物館の価値を明確に伝え、多様な人々に開かれた施設であり続けるためには、日々の運営や設計に細やかな視点を持ち続けることが大切です。

参加型展示とエンゲージメント ― 来館者が関わることの心理的効果

参加型展示・エンゲージメントとは何か ― 新しい博物館体験のかたち

博物館の展示といえば、かつては「見る」ことが中心の一方向的な体験が主流でした。しかし近年では、来館者自身が体験や活動に主体的に関わる「参加型展示」や「対話型展示」が、国内外で広がりを見せています。参加型展示とは、来館者が展示物に触れることができたり、スタッフと一緒に何かを作ったり、ワークショップで他の来館者と意見交換をしたりと、さまざまな体験を通じて展示内容をより深く理解できる展示手法です。こうした展示では「オブジェクト・ハンドリング(実物に触れる体験)」や、創作活動、さらにはストーリーテリングなど、多様なアプローチが採用されています。エンゲージメント(engagement)という言葉は、「関与」「つながり」を意味し、来館者が博物館との関わりを深め、展示体験を自分ごととして楽しめるかどうかを重視する考え方です。従来の「展示を受動的に受け止める場」から、「能動的に体験・参加する場」へと変わってきたことが、現代の博物館の特徴といえます(Chatterjee & Camic, 2015)。

参加型体験がもたらす心理的ウェルビーイングへの効果

参加型展示や体験プログラムが注目される理由のひとつは、こうした体験が来館者の心理的ウェルビーイング、すなわち「心の健康」や「充実感」の向上につながることです。来館者が自分の手で展示物を動かしたり、知識や技能を身につけたり、誰かと一緒に創作や対話を楽しむことで、「自分にもできた」という達成感や「新しい発見があった」という満足感を得られます。これらは自己効力感や自己肯定感を高めるだけでなく、展示への興味や探究心をさらに刺激します。また、参加型の体験を通じて他の来館者やスタッフと協働する機会が増えることで、共感や社会的つながりも生まれやすくなります。多様な背景や世代を超えた人々が交流することで、お互いの価値観や経験を認め合う「社会的包摂(インクルージョン)」の場としての役割も期待できます(Chatterjee & Camic, 2015)。

具体的なプログラムや事例 ― 博物館現場の多様な取り組み

実際の博物館現場では、参加型体験の幅広い事例が展開されています。たとえば、考古資料や美術作品のレプリカに触れてその素材や重さを体感する「ハンドリングプログラム」、古い道具の使い方をスタッフと一緒に学ぶワークショップ、展示室内でのディスカッションやストーリーテリング、さらには来館者が自由にメッセージを残せるコーナーなど、体験の幅は多岐にわたります。また、地域住民がボランティアとして展示解説を担当したり、学校や福祉施設と連携した共同企画を実施したりと、ミュージアムと地域社会のつながりを強める取り組みも増えています。こうしたプログラムでは、単に「展示を見る」だけでなく、「自分も展示の一部」として活動し、その場に貢献できる喜びや社会的な自信を得られることが大きな特徴です(Chatterjee & Camic, 2015)。

ウェルビーイング向上のメカニズム ― 自己表現とつながり

参加型展示によるウェルビーイング向上のメカニズムは複数ありますが、なかでも大きいのは「自己表現」と「社会的つながり」の2つです。自分の考えや感じたことを表現したり、体験を通じて新しい自分に出会うことで、来館者は「自分らしさ」を再発見できます。また、グループで協働したり、他の参加者と感想やアイデアを共有することで、社会的ネットワークが広がります。ミュージアムが「自分の役割や存在価値を実感できる場」となることで、来館者は社会的な居場所や安心感を得やすくなります。現代社会では孤立感や不安感が課題となることも多いですが、こうした体験が心の支えや自己肯定感の強化につながります(Chatterjee & Camic, 2015)。

効果測定と今後の展望 ― さらなる多様化と包摂をめざして

参加型展示や体験プログラムの効果を明らかにするためには、アンケートやインタビューによる主観的評価、参加後の感情変化や社会的交流の広がりなどを丁寧に調査することが重要です。一方で、参加のバリア(たとえば障害や言語、文化的背景など)が残っていたり、プログラムの継続性や質の維持、多様な来館者ニーズへの対応といった課題もあります。今後は、誰もが気軽に参加でき、さまざまな立場の人が自分らしく活動できるよう、より包摂的で柔軟なプログラム運営が求められます。参加型展示は、単なる「体験」や「イベント」にとどまらず、ミュージアムそのものの社会的価値や存在意義を高める重要な要素として、今後ますます期待される分野です(Chatterjee & Camic, 2015)。

実証研究にみる博物館の処方効果 ― Museums on Prescription の成果と評価

博物館の「社会的処方」とは何か

イギリスなどの欧米諸国では、医療や福祉分野で「社会的処方(social prescription)」というアプローチが広がっています。これは医師や地域ケアワーカーが、医薬品ではなく地域資源や文化活動への参加を「処方」することで、生活の質や心の健康を高めようとする取り組みです。この枠組みの中で、博物館が医療機関や福祉機関と連携し、高齢者や社会的孤立リスクの高い人々にミュージアム体験を「処方」するプログラムが「Museums on Prescription」として実施されています(Thomson et al., 2017)。

代表的な実証研究と効果の定量評価

社会的処方プログラムの効果については、科学的な検証も進められています。博物館体験を社会的処方として実施した高齢者グループと、参加していないグループを比較し、心理的ウェルビーイングや社会的孤立感の変化を調査した研究があります。評価指標としてはMuseum Well-being Measure(MwM-OA)やWarwick-Edinburgh Mental Wellbeing Scale(WEMWBS)などが使われており、参加者では感情的な安定や社会的なつながりの増加、自己効力感の向上など、肯定的な変化が定量的に示されています(Thomson et al., 2017)。

博物館と医療・福祉分野の連携事例

社会的処方プログラムは、医療機関や地域包括ケアセンターと博物館が連携する形で展開されています。医師や福祉専門職が参加を希望する高齢者や孤立リスクの高い人を紹介し、博物館ではハンドリング体験やグループ活動、展示解説など多様なプログラムが提供されます。参加者は日常生活では得られない新しい刺激や学び、同じ立場の人との交流や社会参加の機会を得ることで、心の健康や生活の質が向上する傾向が報告されています(Thomson et al., 2017)。

実証研究が示す課題と今後の展望

社会的処方プログラムの効果には個人差があり、評価指標やアウトカムの測定にも課題があります。文化的背景や地域特性によってプログラムの内容や成果が異なる場合があり、高齢者や多様な属性の参加者に、より柔軟で多様な体験機会を提供する必要も指摘されています。今後はプログラム評価の標準化や、さまざまな層への応用可能性を探る研究が求められます。日本国内でも医療・福祉分野と博物館の連携による社会的処方的な取り組みが広がることが期待されており、地域の特性や利用者ニーズを反映した新しいプログラムの開発が求められます(Thomson et al., 2017)。

ウェルビーイング評価指標と博物館実践 ― 効果測定とアウトカムの可視化

博物館で用いられるウェルビーイング評価指標

博物館体験が人々の心理的ウェルビーイングや心の健康にどのように寄与しているかを明確にするためには、客観的な評価指標を用いた効果測定が重要です。博物館分野では、来館者の感情や気分、満足度を数値化するために複数の評価尺度が活用されています。たとえば、Museum Well-being Measure(MwM-OA)は、展示やプログラムの前後で来館者の気分や感情の変化を調べるための専用尺度です。また、Warwick-Edinburgh Mental Wellbeing Scale(WEMWBS)は、生活全体にわたる心の状態や社会的な充実度を測る指標として広く使われています。PANAS(Positive and Negative Affect Schedule)は、ポジティブ・ネガティブ双方の感情の頻度や強度を把握するのに適した質問紙です(Thomson et al., 2015)。これらの指標を組み合わせることで、博物館体験がどのような心理的・社会的変化をもたらすかを、より総合的に把握できるようになっています。

博物館での評価実践と具体事例

実際の現場では、評価指標を使った調査はさまざまな層を対象に行われています。たとえば、Museums on Prescriptionプログラムでは、高齢者が博物館プログラムに参加する前後でMwM-OAやWEMWBSによるアンケートを実施し、心の状態や社会的つながりの変化を詳細に分析しています(Thomson et al., 2017)。このような調査により、参加者が「気分が明るくなった」「他の参加者と話すことで孤独感が減った」といった実感を持つだけでなく、実際に数値の上でもウェルビーイング指標が改善していることが確認されています。また、一般の来館者や子ども、障害のある方など、多様な属性に合わせて、アンケート調査や自己報告尺度、対話を重視した半構造化インタビューなど、調査方法を柔軟に組み合わせる取り組みも進められています。こうした工夫により、博物館体験がもたらす効果を幅広い角度から「見える化」することが可能になっています。

効果測定のメリットと限界

ウェルビーイング評価指標を使うことで、博物館が社会にもたらす価値や、プログラムの成果を第三者にも分かりやすく示すことができます。例えば、効果測定のデータをもとに、博物館の広報活動や助成金申請、行政や関係機関への説明責任にも活用することができます。数値や具体的なエピソードによって、来館者の変化やプログラムの意義が可視化されるため、現場スタッフのモチベーション向上にも寄与します。一方で、こうした主観的評価には個人差や一時的な気分の影響が大きく、結果をどのように解釈し活用するかが常に問われます。また、調査を継続的に実施するための人的・時間的コスト、標準化された評価手法の不足、多様なアウトカムへの対応など、今後に向けた課題も存在します(Thomson et al., 2017)。

今後の評価手法と実践の展望

最近では、ICTの発展により、タブレットやスマートフォンを使ったデジタルアンケートや、来館者の行動観察を通じた客観的データ収集など、新たな評価方法が広がりつつあります。デジタルデータを活用することで、リアルタイムでの結果集計や大規模データの分析も容易になり、多角的なアウトカム評価が可能です。さらに、日本の博物館現場でも、地域の特性や来館者層の多様性に応じた調査設計の工夫や、複数の評価指標の組み合わせによる総合的な効果測定が重視されるようになっています。これからは、効果測定の実践を通じて得られる知見を活用し、博物館の社会的価値をいっそう明確に発信していくことが重要です。さまざまな人々が自分らしく参加できる、開かれたミュージアムづくりに向けて、評価手法のさらなる進化が期待されています(Thomson et al., 2017)。

おわりに ― 博物館ウェルビーイング実践の展望と課題

本記事のまとめ ― 博物館とウェルビーイングの意義

本記事では、博物館が心理的・社会的ウェルビーイングの推進に果たす役割について、多角的に解説してきました。癒しの空間設計や参加型展示、社会的処方プログラム、効果測定とアウトカム評価といった具体的な実践事例を通じて、博物館が来館者一人ひとりの心の健康や充実感、社会的つながりを支えるインフラとして機能し始めていることが明らかになっています(Thomson et al., 2017)。

実践現場の変化と今後の可能性

近年、参加型展示や社会的処方のようなプログラムはますます多様化し、医療・福祉・地域との連携も広がっています。誰もが自分らしく参加できる包摂的な場づくりや、来館者自身が主役となる体験型学習、評価指標を活用したアウトカムの可視化など、現場レベルでの変化が確実に進んでいます。こうした動きは、ミュージアムが社会的価値や市民のウェルビーイング推進拠点として期待される未来像を現実のものとしつつあります(Thomson et al., 2017)。

残された課題と今後の展望

一方で、評価指標の標準化やエビデンスの蓄積、プログラムの継続性、地域や対象層ごとの多様性へのきめ細かな対応といった課題も残されています。ウェルビーイングの効果を正確に把握し、現場で活かすためには、定量評価と主観的評価をバランスよく組み合わせた測定や、長期的なアウトカムの追跡が不可欠です。今後も、研究者と実務者が協働しながら、社会的価値を高めていくための視点と工夫が求められます(Thomson et al., 2017)。

博物館ウェルビーイング実践が社会にもたらす意義

博物館のウェルビーイング実践は、市民一人ひとりの心の健康や社会的包摂を支えるだけでなく、地域社会全体のつながりや活力を生み出す源泉となります。今後も、誰もが自分らしく学び・交流できる開かれた場として、ミュージアムが社会的インフラの一翼を担い続けることが期待されます(Thomson et al., 2017)。

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この記事を書いた人

kontaのアバター konta ミュゼオロジスト

日々の業務経験をもとに、ミュージアムの楽しさや魅力を発信しています。このサイトは、博物館関係者や研究者だけでなく、ミュージアムに興味を持つ一般の方々にも有益な情報源となることを目指しています。

私は、博物館・美術館の魅力をより多くの人に伝えるために「Museum Studies JAPAN」を立ち上げました。博物館は単なる展示施設ではなく、文化や歴史を未来へつなぐ重要な役割を担っています。運営者として、ミュージアムがどのように進化し、より多くの人々に価値を提供できるのかを追求し続けています。

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