ヴィジュアルシンキングストラテジーズについて考える

先の記事にて医学部生が視覚スキルを向上させるためにヴィジュアルシンキングストラテジーズ(以下、VTS)という方法を用いて対話型鑑賞を実践していることをご紹介しました。

この記事ではそのVTSについて具体的にどのようなものなのかについて紹介したいと思います。

目次

3つの問いで対話を進める

 VTSは実際に対話を行う複数人の参加者と対話を促す役割を担うファシリテーターが参加して行います。

ファシリテーターの役割は次の3つの質問を参加者に問いかけ、対話を促進することです。

  1. What’s going on in this picture? (この絵には何が描かれていますか?)
  1. What do you see what makes you say that?(絵の中のどのようなところからそう発言しましたか。)
  1. What more can we find? (他に描かれていることはなんですか。)

ファシリテーターは基本的に以上の3つの質問だけをします。

Visual Thinking Strategies

https://www.gvsu.edu/artgallery/visual-thinking-strategies-152.htm

ファシリテーターの注意事項

対話型鑑賞を行ううえでファシリテーターには次のような注意事項があります。

まず、参加者の発言が止まって沈黙する時間が生まれたとしてもファシリテーターは何かヒントを与えるような発言はしないところがポイントです。

なぜなら、その沈黙は参加者が自己との対話や周りの発言に基づきより深い鑑賞をするためとても重要な時間だからです。

その沈黙が続く時間も気まずい雰囲気にならないように場の空気をつくることができればファシリテーターとしては一人前といっていいのではないでしょうか。

また、作品の名称や制作背景といった作品を説明するために必要な情報もファシリテーターは提供してはいけません。

なぜなら、その情報によって視点に偏りが生まれてしまい参加者が鑑賞できる可能性を狭めてしまうからです。

このような注意事項を伝えるとファシリテーターは何をすればいいのかと迷われてしまう方も多いかもしれません。

私が考えるファシリテーターの役割は参加者が自由に鑑賞して色々な角度から発言できる場の空気を作ることに徹するです。

参加者同士の対話にファシリテーターが物足りないと思うことがあったとしてもそれが今の参加者にとってベストであることを常に信じて次の発言がしやすいようにどのような意見に対しても寛容であることが重要だと考えます。

時間は特に決まりはないですが少なくとも10分程度は1つの作品と向き合う方が良いかと思われます。

また、対話型鑑賞を経験した後に振り返りの時間があると参加者がどのように見え方が変化したのかが分かり面白いと思います。

対話型鑑賞で得られること

このVTSの開発者であるフィリップ・ヤナウェン氏は1997 年の記事「視覚リテラシーについての考え」の中で、視覚リテラシーを次のように説明しています。対話型鑑賞で得られること

「…イメージに意味を見出す能力。それには、単純な識別(見たものに名前を付ける)から、文脈、比喩、哲学レベルでの複雑な解釈に至る一連のスキルが必要です。個人的な関連付け、質問、推測、分析、事実発見、分類など、認知の多くの側面が必要とされます。客観的な理解はこのリテラシーの多くの前提条件ですが、知ることの主観的および感情的な側面も同様に重要です。」

Overview of Aesthetic Development

https://vtshome.org/aesthetic-development/

最近はインスタグラムやTikTokといったイメージ先行のSNSが流行しています。ただ、そのイメージを受動的に受け取るのではなくてそのイメージから能動的に考えることができる能力が育つのがVTSなのではないのかなと思います。

VTSについては私も学びを深めたいと考えていますので別の記事でもご紹介を続けたいと思います。

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この記事を書いた人

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日々の業務経験と研究知見をもとに、博物館の魅力と可能性を多角的に発信しています。本サイトは、学芸員課程の学生や博物館実務者を主な対象としながら、ミュージアムに関心を持つ一般の方々にも理解しやすい形で、理論と実践を架橋する情報提供を目指しています。

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