博物館概論– category –
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企業博物館とは何か ― 歴史・ブランド戦略・社会的役割を読み解く
はじめに 現代社会において、企業が自らの歴史や製品開発の過程、理念を広く社会に発信する動きが広がっています。その中で注目されているのが、「企業博物館」と呼ばれる施設の存在です。企業博物館は、企業が自ら設立・運営する展示施設であり、従来の公... -
博物館の価値とは何か ― 社会的使命と文化的役割を再定義する
はじめに 「博物館の価値とは何か?」――この問いは、一見すると自明のように思えるかもしれません。博物館は文化財を保存し、人々に知識や感動を届ける場であり、その存在自体が“価値あるもの”と考えられがちです。しかし、現代社会において、博物館が社会... -
ヴンダーカンマー(驚異の部屋、Cabinet of Curiosities)とは何か ― 博物館の起源に見る収集と驚異の世界
はじめに:博物館の原点は“驚異の部屋”だった 今日の博物館は、文化財や芸術作品を保存・展示し、来館者に知識と体験を提供する公共施設として広く知られています。しかし、こうした制度的な枠組みが整備され、一般に「博物館」として機能し始めたのは、近... -
博物館と国際連携とは何か ― グローバルなネットワークと文化外交の視点から
はじめに 近年、博物館は地域社会の文化拠点としての役割に加え、国際社会における「知の交差点」としての新たな使命を担うようになってきています。国境を越えた連携や協働が進むなかで、博物館の活動領域はますます広がりを見せ、展覧会や研究のみならず... -
博物館の目的とは何か ― 社会的使命とその多様なかたち
はじめに 「博物館って、何のためにあるの?」こう問われたとき、あなたは何と答えるでしょうか。展示を見て学ぶ場所、貴重なものが大切に保管されている場所、家族で楽しく過ごせる場所——そのどれもが正しく、そして同時に不十分かもしれません。 私たち... -
博物館経営の法的枠組みとは何か ― 制度設計と責任の範囲を理解する
はじめに 博物館は、資料を収集・保管・展示するだけの施設ではありません。教育、学術、文化の発展に寄与することを使命とする、社会的かつ公共的な存在です。そしてこのような役割は、単なる理念にとどまらず、法制度に裏付けられたものです。 現代の博... -
博物館と行財政制度 ― 公共性と持続可能性を支える制度設計とは
はじめに 博物館は、社会にとって文化的・教育的な価値を持つ公共的な存在です。過去から現在、そして未来へと知識や記憶をつなぐ役割を果たし、展示や教育を通じて人々の学びや感動を生み出してきました。しかしその背景には、法律や制度に基づいて活動を... -
博物館の倫理とは何か ― 収集・展示・運営における判断と責任
はじめに:公共性を支える判断基準としての「倫理」 博物館は社会における信頼の拠点であると同時に、公共的な知の表現装置でもあります。展示される資料、収集されるモノ、そこで働く人々の振る舞い――そのすべてが来館者に対して「信頼できる」と思わせる... -
18世紀のミュージアム:啓蒙時代における博物館の歴史と役割
ミュージアムとは、誰のために、何のために存在しているのでしょうか。この問いは決して現代特有のものではなく、その起源は18世紀ヨーロッパにおける激動の歴史と深く結びついています。 18世紀は、政治・経済・思想において大きな転換が重なり合った、き... -
ミュージアムは誰のものか?―パブリックとプライベートの境界線―
美術館や博物館に足を運ぶとき、私たちは自然と、そこに展示されている美術品や歴史的遺物、あるいは民俗資料や自然標本といった数々の展示物を「公共のもの」であると受け止めます。展示室に並ぶ作品たちは、特定の誰かの所有物ではなく、すべての人に開... -
なぜアートコレクターは美術品を集めるのか?―ミュージアムから見た「収集」の物語―
美術館で展示されている名品の数々。その背後には、実は「個人のアートコレクター」の存在が深く関わっていることをご存じでしょうか。私たちが美術館で目にする作品の多くは、国家や公的機関が収集したものと思われがちですが、実際には、一人の個人が人... -
経済から見たミュージアム──その価値は「展示」だけではない
はじめに──「文化と経済」を結ぶ視点 私たちはしばしば「文化」と「経済」という言葉を、異なる世界のものとして理解しがちです。文化とは芸術や歴史、思想、感性といった精神的価値に根ざした領域であり、それは私たちの内面を豊かにし、社会の多様性と深... -
プライベートミュージアムという現象——アートと富の交差点
はじめに:美術館は誰のものか? 私たちが「美術館」と聞いて思い浮かべるのは、しばしば国立や市立といった公共機関が運営し、芸術文化を広く一般市民に開かれた場として提供する、いわば民主的な文化の殿堂です。そこでは過去から現在に至るまでの優れた... -
ミュージアムと社会包摂:文化的包摂のための新たな役割
はじめに 近年、ミュージアムは単なる展示施設としてではなく、社会包摂の場としての役割を求められています。社会の多様化が進む中で、文化的なインクルージョン(包摂)を推進することは、ミュージアムの使命の一環となりつつあります。特に、移民や障が... -
ミュージアムの社会的役割とは?文化・教育・経済を支える存在
ミュージアムは単なる展示施設ではなく、社会において多様な役割を果たす存在です。その役割は時代とともに進化し続け、文化的な価値を伝えるだけでなく、教育的機能を強化し、地域社会との結びつきを深める役割も担っています。さらに、経済的な側面から... -
ミュージアムと都市再生:文化が都市を変える力
はじめに 現代の都市再生において、ミュージアムは単なる文化施設としての役割を超え、経済的・社会的な再生の触媒となる極めて重要な存在となっています。特に、かつては産業の中心地として栄えながらも、近年の経済構造の変化や産業の衰退によって活力を... -
ミュージアムと都市:文化・経済・空間デザインの交差点
はじめに ミュージアムは単なる文化施設ではなく、都市の象徴的な存在として、観光資源、経済活性化の起爆剤、そして都市空間の再生装置としての役割を果たしています。古代から都市と文化施設は密接な関係を持ち、ルネサンス期のヨーロッパでは美術館や図... -
博物館は誰の歴史を語るのか ― 脱植民地化と未来のミュージアム像
はじめに:語られなかった声を、博物館でどう取り戻すか 博物館は、過去と現在をつなぐ「語り」の空間です。展示されたオブジェや絵画、資料の一つひとつは、ある視点で選ばれ、配置され、物語を構成しています。しかしその物語は、果たして誰の視点から語... -
博物館の定義から経営を考える ― ICOM定義の変遷とその意味
「博物館とは何か」。この問いは一見すると学術的・抽象的に聞こえるかもしれませんが、実は博物館の運営や経営の根幹をなす非常に現実的な出発点でもあります。定義とは、単に言葉の意味を明らかにするための記述ではありません。それは、何を大切にし、... -
ロンドンはどのようにしてデザインミュージアムを作ったのか
日本において国立デザインミュージアムについてはすでに色々と検討されています。 2012年にデザイナーの三宅一生さんと美術史家の青柳正規が中心となって声を上げたことが国立デザインミュージアムをつくる機運の始まりとなりました。 現在も一般社団法人D... -
美術館と博物館の違いを考える(目的の違い編)
皆さん、美術館と博物館の違いはご存じでしょうか。 どちらの施設ともに展覧会を実施していることから訪れる方にとってはさほどの違いが感じられないかと思われます。 しいて違いを挙げるとすれば博物館が古いものを扱っていて、美術館が最近のものを扱っ... -
医者がミュージアムに行くことを処方する時代
精神疾患やうつ病といった症状は現代社会において世界中で大きな問題となっています。 もし、このような症状を持つ患者がミュージアムに行くことで症状が緩和できるのであればミュージアムが持つ社会的役割を拡張することにつながるかもしれません。 今回...
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